ウサギと亀

家族

 小学3年生の時に、サッカーに夢中に取り組む少年は、「リフティング」で1056回を達成した。約30年前の武勇伝。武勇伝の裏には、小さなきっかけと続きの話がある。

 小学2年生の時に行われたサッカークラブ内での「リフティング大会」で私の記録は10回。一番の子は、11回で2位だった。自分が一番になると思い込んでいた私は、人生最大のショックを受けた。今でもあのグランドで感じた喪失感を覚えている。

 小学校2年生になって始めたサッカー。それまで、ザリガニや虫取り、野球ばかりしていた私は、両親譲りの運動神経を駆使して、何でも一番になることが、自分の中での当たり前だった。小学生の私にとって、半径100メートルが世界の全てだった。

 大きなショックを受けてから、家の隣にある公園が私の練習場所となった。リフティングのいい所は、一人でできるところ。毎日、本当に毎日取り組んだ。最高記録が出るたびに、母親に報告に行き、記録を伸ばし続ける日々。よぼど2位になったことがショックだったようで、サッカークラブ内での1位では満足できず、3年生になると1000回を達成した。

 リフティングの練習で身に付いたボールコントロールは、小学生時代の私をずっと支えてくれた。1000回を達成した後、サッカークラブ内での1位が目標だった私は、目標を失い、練習を辞めた。もちろんサッカーは変わらず大好きだったが、リフティングの練習は一切やらなくなった。リフティングで貯めた貯金は、小学生までに使い切り、中学生になってからのサッカー人生は、あまりいいものではなかった。まさに「うさぎ」だった自分。

 息子もサッカーを始め、幼稚園から始めたサッカー。(親の私がやらせたかった)やらされたサッカー。途中で嫌いになり、チームを変えたり、休んだりを繰り返していた。

 そんな息子も、いい指導者に出会えたことで、サッカーにのめり込んでいった。小学4年生になったころには、リフティング1000回を達成。(私は3年生でできたと自慢話)6年生になった今、いい指導者といいライバルに出会い、楽しく記録を伸ばし続けている。6000回はできるようだ。(近くにライバルがいることで、息子は自慢しない)

 私は、「ウサギ」で息子は「亀」恥ずかしくもあり、嬉しくもある話。環境は大切だ。子どもたちの可能性は本当に無限大で、生かすことも殺すこともできる。当時、1000回出来るまで励ましてくれたであろう両親に感謝しよう。嫌いから夢中にまでしてくれた、指導者や周りのライバルに感謝しよう。

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